「どれもこれもしっくりこない」
自分が求める機能、サイズ、デザインを兼ね備えたカバン。
いくら探しても見つからない、そんな経験ないだろうか。
設計の仕事をしている私は、いつもカバンに困っていた。
もともとカバン好きで色々集めてはいたのだが、まずA3サイズの書類が入るカバンが少ない。
現場ではペンキなどの汚れはつきものだから、革製品なんてとても使えないし、
黒いカバンはホコリで真っ白になり、電車にも乗れない有様なのだ。
ある日ふと、事務所にあった生地が目にとまった。
それは、数年前、倉敷のファッションショーでテント生地の服を製作した時にお世話になった
「日の出テント」さんのものだ。
工場に置かれていたこの生地の質感がとても気に入り、頂いて帰ったのだ。
これを使って自分でカバンが作れないだろうか?
それがONODE第1号だった。
当時作ったのはA3サイズの書類が入るリュック。
少し足りなかった生地は、青と緑を切り返して工夫して使った。
完成品は、我ながら「これしかない!」と思うほどの出来栄えだった。
そのリュックは、カスタマイズを繰り返しながら3年間毎日のように使い続けた。
丈夫で汚れが目立たず、珍しい配色は、たくさんの友人に褒められた。
そうするうちに、きっとこんなカバンを探している人は他にもいる、強くそう思うようになった。
ONODEの商品化は、リュック製作から5年を経過してのことだった。
ONODEは、自分で使うために製作したカバンが原点。
こだわってつけた機能は、誰もが求めるものではないのかもしれない。
カラーバリエーションは基本1色のみ。
全て日本製を使用しているので、価格も決して安いほうではないと思う。
だけど機能は減らせない。こだわりもなくせない。ここまでやる!?と言わせたい。
自分が使いたいと思うものではなければ、ONODEではないから。
だから商品は全て自分で一度使い、機能性を追求し、納得がいったものだけを販売している。
商品化した後も試行錯誤を繰り返し、お客様の希望で改善することもある。
販売しているのは、ウェブショップと、ONODEを応援してくれるいくつかのお店だけ。
積極的にどこかに売り込むでもなく、コツコツと販売してきた。
その間に何度か雑誌にも取り上げて頂き、トートバックの販売数はいつの間にか100を超えた。
ONODEの生地は、トラックのホロ。
日光に晒され、潮風を浴び、高速道路の強い風さえものともせず、
長距離を走り続けるトラックのホロは、大事な積荷を守るためとても強くできている。
汚れは簡単に拭き取ることが出来る。
少々の雨も大丈夫。
長い間使っていると少し薄くなったりして風合いがいい。
一番いいのは汚れが目立たないことだ。
色と素材が偶然にマッチして、少々雑に使っても汚れが気にならない。
ONODEのカラーバリエーションは青と緑の配色のみ。
今後も、それ以外に造る気はない。
日の出テントさんと、この生地との出会いがなければ、ONODEの誕生はなかった。
様々な感謝を込めて、そして大正4年創業の長い歴史の一端を担うパートナーとして
この生地を使い続けたいと思っている。
ONODEの細部にまで込めた意味、思い、デザイン。
何か1つでも、気に入って頂ければ嬉しいです。
2012年6月 デザイナー ONO